デンマークでの永住を断念した理由 | いまのしゅんかん

デンマークでの永住を断念した理由

フォローしている、デンマークで研究者をされていた方がたった一年半で移住してしまい、その理由についてNoteでポストされており、有料記事だったのだが払おうと思っても私のカードは決済拒否され、そしたら彼が購入したというので読ませてもらった。

 

同じタイミングで彼が買ってたのも笑ったが、結構他にも購入した人がいるらしい。

私が買おうと思ったのは、決して売り上げを目的にしていないことがあらかじめわかっていたからである。

有料にしていたのは、個人的な事情を含むため、変な人に読んで欲しくない、という気持ちがあったからだそうである。実際に結構高めに設定されていた割には購入した人もそれなりにいて、決して感情的にデンマークをディスるような内容ではなく、丁寧に書かれた良質な記事で、コメントしていた人のほとんどが好意的な書き方だった。

 

そのポスト主の方は、5年契約でデンマークに移住し、当初は有期限とはいえ、それまでに複数の国を移転してばかりだったので流石に落ち着きたいと永住を考えていたらしい。

しかし、永住の厳しさの現実を認識するうちにデンマークに止まり続けることのリスクを感じ、そうなるとお子さんもいらっしゃるし住んでいるだけで色々と不利益になるので早々に転出を決意したそうである。

 

私も、デンマーク人と結婚しなければ、間違いなく永住しなかったと思う。

なかなかデンマークから出ることを決意できない理由があったからこそ、永住してデンマークのシステムや価値観、マインドセットに嵌るよう努力できた。

努力が嫌いだから、よっぽどの事情がない限り、頑張れなかったと思う。

 

特に日本人にとって最も厳しい現実は、デンマークでの雇用が決して安定していない、ことである。

能力に関係なく、理不尽なレイオフはよくある。

それは、隣国のスウェーデンやノルウェーに比べても、デンマークは厳しいらしい。逆に解雇が容易だからこそ、雇用も容易で、人材の流動性が高い、というメリットも大きいのだが。

実際、弊社でも先月末にトップの一人が解雇されたばかり。そして代わりの人が来月から入社する。16年半以上働いてきて、人の入れ替わりを嫌と言うほど見てきた。

 

これを、北欧礼賛の人は福祉システムが充実しているから解雇されても安心、と声高に言うけど、それも大きな誤解。

私の場合、失業保険の給付なんか、給料よりも全然少ないので、彼が移住してくる前、まだ娘が同居していた時に失業していたら経済的に行き詰まっていただろう。

いざとなったら、アパートを売ればいいというオプションがあったので、必ずしも生活が立ち行かなくなるという不安はなかったけど、それでも生活は一変するので、シングルマザーだったときは解雇の不安は常にあった。

 

じゃあ、なぜデンマーク人が冷静でいられるか、というと、突然の解雇ということがデンマークの文化として根付いていて、それが起きても仕方がないというマインドセットがあるから、だと思っている。

つまり、生活が一変したとしても仕方がないこととして受け止める感じ。

とはいえ、デンマーク人はリスクを軽減するために研鑽を怠らず、自分の役割がないと判断すれば水面下で転職活動し、仕事が決まればサクッと辞めるような気がする。

でも日本人は安定を求めたいから、なかなかそういうマインドセットになれないと思う。

わたしだっていまだにそれを完全受容できているわけではない。でも安定すると怠けることもわかっているから、緊張感がある方が自分のためにはいいと思うけど。

 

デンマークは楽園というイメージもあるみたいなので、ある意味厳しい現実を示したポストだったと思う。