君たちはどう生きるか | いまのしゅんかん

君たちはどう生きるか

 

娘と彼と3人で、ジブリ映画「君たちはどう生きるか」を劇場まで観に行ってきた。

アニメだけど子供向け映画ではなく、吹き替えは全くなく字幕のみ。

始まる前の映画の宣伝は子供向け映画のみのような感じだったが。(で、「カンフーパンダ4」を観に行く気満々になるという。。娘は吹き替えではない英語バージョンで観たいそうだ。)

 
宮崎駿作品は「風立ちぬ」以来とか。

 

 

これもデンマークの劇場で観に行ったけど、今回ほど劇場は多くなかったような。

もう10年前か。。こないだ久しぶりに再会した友達も一緒に行ったんだった。。

この映画で飛行機に興味を持ち、その3年後に航空工学を専門としていた彼に出会うことになるとは。

 

「風立ちぬ」も太平洋戦争の時代背景だったが、「君たちはどう生きるか」はいきなり大火災の場面から始まり、思い切り戦争をテーマにした映画かと思ったが、実際にはかなり毛色の異なる映画だった。

 

知らなかったけど、宮崎駿自身のバッググラウンドがかなり反映されているらしく、実際に航空機部品を作る会社の子供として生まれ、戦時中に栃木に工場ごと移転したという。そしてかなり裕福な暮らしをしていたとも。そして子供の頃から実母が病気で長期に渡って寝たきりだったとか。

物質的には何も不自由してないが、母親の愛情には飢えていた自分を投影させた主人公のキャラクターを作ったのかもしれない。

戦時中の設定にもかかわらず、陰惨さは皆無で、なのに悲壮感に溢れている。まるで現代の子供のよう、とも思った。

 

 
私はこのバズったポスターが大好きなのだが、この映画でも英語やデンマーク語のタイトルにもあるように、アオサギがキーパーソンである。もちろん「詐欺」を意味しており、嘘ばっかりつく鳥として出てくる。だけどこのアオサギがまた憎めないキャラクターで、結果的に主人公が行動することの動機を与え続ける。
 
そして導かれた「下の世界」は、生きている人のいない世界だけど、実はそれこそが現実を写しているのでは?と思ったりした。
赤ちゃんとして生まれるはずの魂を食べてかろうじて生きているペリカンが、全くファンタジーに思えず。消費エネルギー量が激増している現代において、あまりにも皮肉な投影に見えてならなかった。
 
そういう悪意に満ちた世界を経て、悪意の汚れのないブロックを前に、主人公が自分自身の悪意を認めたことはすごいなと思った。
美しい天国にとどまるのではなく、苦しいことも多い現実社会で自分は生きていくと決意したところが感動的な場面だった。
 
私の好きな「もののけ姫」もそうだけど、人間の醜さも悲観的にではなく淡々と事実として描きながら、その中で希望も示唆するのが宮崎駿作品のいいところだと思う。
 
日本では賛否両論の映画だったらしいが、私は結構楽しめる映画だった。