オフグリッド山小屋泊(3) | いまのしゅんかん

オフグリッド山小屋泊(3)

 

ファシリティがどんなものか分からず、荷物を最小限にしたかったので、夕飯はお湯を注ぐだけで食べられるハイキング食を持参していたが、スキーから帰ってきた途端キッチンからいい匂いがしてきて、羨ましくなった。

ノルウェー人の若い男の子がフライパンで炒め物をし、グラッシュのようなものを作っていたのだった。

その子は視界が悪いのに、私たちが登ろうとしていた山に頂上までクロカンで登ったらしい。当然景色は何も見えなかったという。一面銀世界でよく方向を間違えずに下りてこられたものだと感心した。テレマーク地方に住んでいて、地元だけによく知っているようではあったが。

ちょくちょくこういう旅行をするらしく、何もかも手際がよかった。井戸やトイレの場所を教えてくれたのも彼だった。

かっこいいーーこういう生活力のある人いいなぁと思う。

 

とはいえ、山でしか食べないインスタントフードでも、蝋燭をともしながら食べるのはヒュゲリだった。

コーヒーもインスタントだけど何故か美味しいと思える不思議。。。

食べ終わってからは、部屋でイワシ缶をつまみに日本酒を飲む。至福の時。。。

ここぞとばかり、持参してきた統計の本を読み耽る。

 

 
しかし、問題はこの後だった。
最初は酒が入っていたこともあり、スムーズに睡眠に入ったのだが、数時間で起きてしまい、それからなかなか眠れなかった。
私はシュラフカバーに直接入って、山小屋の掛け布団をかけて寝ていたのだが、このカバーはゴアテックス製だけあって保温機能が高すぎて暑く、しかもゴムのような感触が不快でしょうがなかった。
だけどお風呂に入ってなく特に足元は汚れているから直接掛け布団に触れるわけにはいかない。掛け布団をどかしたりして何とか改善を試みるも全然眠れず、何時間も我慢した挙句に彼を叩き起こしてシュラフを出してもらい、掛け布団と枕は上の段のベッドに移動させ、ゴアテックスのカバーは使わずにシュラフだけで寝ることにした。
シュラフも暑いので、全開状態だけど、足先だけはシュラフに入ってマットレスには触れないように気をつけた。
これだけでもだいぶマシになり、やっと寝入ることができたのだった。それでも数時間しか寝られなかったが。
次回は綿のシーツと布団カバーを持参しようかと思ったけど、やはり重いし嵩張るので、彼と同じようにシルクの敷物を使うべきではと言われた。
 
長い夜が明け、月曜日は快晴だった。
朝食を食べ、パッキングし、スキーで駐車場に移動したが、絶景を眺めながらの移動は楽しく、若干下り気味だったので行きよりもずっとあっという間に駐車場に着いた。
 
こんな天気だったら、山の上まで行きたかった。。。
 
本当に最高の山小屋泊で、名残惜しかったしデンマークに帰るのが悲しかった。
あまりに異世界すぎて、考えさせられもした。
不便だからこそ、エネルギーや水などの資源が有り難いと感じるし、動かないことには何も得られないので怠惰に生きられない。
トイレに行くだけで、スキーブーツをはき(バックルをはめ)、戻ってくるときにはまずブラシで雪を取り除いてから中に入りブーツを脱ぐ、というプロセスを踏まなければならない。まぁこれは流石に面倒くさかったので、登山靴かクロカンブーツを持参するべきだったね、という話にもなったが。
今、世界一幸せな国と言われるデンマークでさえ若者のメンタルの不調が問題になっているけど、逆に何もかも便利すぎる社会で動かなくなり、心を病むリスクが増したのでは?と思ってしまった。それに、頭を使わなくても、いくらでも時間を潰せる術が増えたのも良くないのでは、と思ったりも。
 
あまりにもよかったので、近々再訪する予定。その場合は自炊もしようと思っている。